31: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:33:32.84 ID:86FQdztyO
「おーい、甘奈ー?」
しばらくしてから一階に降りて、甘奈を探す。
リビングでは、甜花が一人でゲームをしていた。
しまった、甜花に待っててくれってお願いしてたんだったな。
正直凄く眠いのだが、約束してしまったからにはきちんと果たさなければ。
「お兄ちゃん……っ! そろそろ、甜花とゲーム……」
「ふぁぁ……そうだったな、悪い悪い」
「一人で待ってた甜花……偉い……! ちゃんと撫でて労うべき……!」
わしゃわしゃと撫でると、目を細めて心地良さそうに笑う甜花。
直後にゲームでミスをしてちょっと頬を膨らませた。
「ところで甜花、甘奈知らないか? 甘奈も一緒にやるって言ってたからさ」
「……なーちゃん? えっと……」
首を傾けて、思い出すポーズの甜花。
「……あ。さっき千雪お姉ちゃんと一緒に、階段登ってく音がしたような……してないような……」
「っ!!」
甜花が言い切るより早く、俺の足は動いていた。
千雪と二人で、と言う状況に心臓が跳ねる。
大丈夫だ、姉妹なのだから当たり前の事だろう。
心配する様な事じゃない、大丈夫だ。
少なくとも甘奈が俺を裏切る事だけは、絶対に無い。
何処だ、千雪の部屋かっ?!
「おーい! 甘奈ーっ!!」
階段を登る。
一段一段がとても高く、とても長く感じる。
こんなにも二階は遠かっただろうか。
こんなにも身体は重かっただろうか。
「あま……なー……!」
やけに眠い。
やけに重い。
それでも、探す。
思考だけはまだ割とはっきりしていた。
「〜〜っ!!! 〜〜っっ!!!!」
声ならぬ声が二階中に響いた。
とても甲高い音だった。
「甘奈ー……っ! おー……いっ!」
音源は、千雪の部屋だった。
嫌な予感がする。
背中に嫌な汗を垂れ流しながら、鉛の様に重い身体を動かす。
ゆっくりと近付き、俺はドアをノックした。
こん、こん
「おーい……甘奈ー……? 千雪ー……?」
『あら、もう来てしまったの……どうぞ、兄さん』
開けない方が良い。
見ない方が良い。
知らない方が良い。
生命としての本能の様な物がけたたましく警鐘を鳴らす。
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