10: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 17:30:36.97 ID:86FQdztyO
「今日の朝ご飯はね、甜花ちゃんが作ったんだよ!」
「にへへ……甜花、頑張った……」
食卓に並べられた料理は、盛り付けはそこまで上手とは言い難かったが。
けれど味噌汁はきちんと出汁が取られ、白米も柔らかくしっかりと作られたものだった。
味の方は勿論、とても美味しい。
前までは料理なんてするイメージはなかったが、いつの間にこんな上達したのだろう。
「凄いじゃないか甜花、勉強したのか?」
「……それは、その……千雪お姉ちゃんに……」
「ふふ、それでも頑張ったのは甜花ちゃんよ? 私、今日は全然お手伝いさせて貰えませんでしたから」
「……甜花が、一人で……お兄ちゃんに、褒めて欲しかったから……」
「そっか。ありがとな、甜花」
軽く撫でると、心地良さそうに甜花は目を細めた。
次女である甜花は普段はグータラしているが、やる時はやる子だ。
実際目の前の料理は、ほんの数日程度で作れるレベルの味ではない。
盛り付けがもう少し整っていたら、作り慣れている千雪の料理と勘違いしていたかもしれないレベルだ。
「いーなー。甘奈も撫でて貰いたいっ!」
「それじゃ……お夕飯は、なーちゃんが作って?」
「うんっ! お兄ちゃん、めーっちゃ期待しててね!」
「それは楽しみ……ん?」
……あれ?
昨夜の夕飯も、甘奈が作ってくれたんじゃなかったか?
昨日、夕飯は甘奈が作るって言ってた様な気がするんだが。
確か、朝食は甜花が一人で作ったから夕飯は甘奈が作……
……甜花が?
甜花が朝食を作った?
何を考えているんだ俺は、甜花が朝食を一人で作ってくれたのは今日が初めてだろう。
さっきの会話からして、それは間違い無いだろう。
……いや、間違い無い。
俺はこの食卓を、昨日も見て……
「ん? どうしたの、お兄ちゃん?」
「……あぁいや、何でもないんだ。夜が楽しみだ、ってな」
「うんっ! お兄ちゃんに喜んで貰える様に、甘奈頑張るから!」
「ふふ。それじゃあ、私は夜もキッチンに入れて貰えなさそうね」
自然に、いつも通りに、日常会話が続く。
俺が先ほどまで浮かべていた疑問なんて、もう思い出せなくなっていた。
甜花が作ってくれた朝食は、あっという間に食べ終わってしまった。
とても美味しかった、とても幸せだった。
それこそ、この幸せがいつまでも続いてくれたら、と。
そう、願ってしまうくらいには。
60Res/110.14 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20