白雪千夜「足りすぎている」
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86:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:21:00.83 ID:1/ZkFkMM0
 曲が始まると、その場の空気の隅々が一斉に熱を帯び、私達と共に音と光が縦横無尽に弾け飛ぶ。
 お嬢様もそこにいるであろう観客席は、もはや言うまでもないほどの盛り上がりようだ。

 ラブライカの『Memories』とは違い、『GOIN’!!!』は前々からしっかり練習を積んでいた曲だ。
 それに、今のこのステージ上には、馴染みのある15人のシンデレラプロジェクトのメンバーが勢揃いしている。


 ずっと不思議だったことがある。
 観客が行う、いわゆるコールと呼ばれるものだ。
 今日初めて披露される新曲でも、こうして観客がピッタリ息を揃えて声を出し、ペンライトを振るうことができるのはなぜだろう。

 皆に聞いてみたところ、どうやら入場した際に予めパンフレットと一緒にコールを示したものが配られるらしい。
 それは、観客にもステージ上のアイドル達と一体となって楽しんでもらうための配慮なのだろう。

 事実、まるで観客達と会話をしているかのように、私達の歌にペンライトの群れが呼応する。
 然るべきタイミングで与えられるコールが私達の気力を引き上げ、同時に観客のボルテージも上がっていく。


 先ほどよりも、ずっと落ち着いていることに気づいた。
 こうしてステージを見渡し、観客の反応を楽しむ余裕さえある。


 ――楽しい?



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