白雪千夜「足りすぎている」
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43:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:39:39.62 ID:QXbKSZYO0
 東京でも、こんなに見れるものなんだな。
 こうしてマジマジと見るのは、随分と久しぶりな気がする。


「ズヴェズダ……」

 アーニャさんの声が聞こえたので、振り返ってみると、星明かりに照らされた彼女の横顔があった。

「星、キレイ……キレイなもの、見るのは好きです」

「天体観測が、アーニャさんの趣味だったのですね」
「ダー♪」

 嬉しそうに、アーニャさんは一等星を見つけて指を差した。

「あれ、とても赤くて明るいですね」
「あの星は、きっとアークトゥルスかと」

 春の季節、南の空に上る一等星。
 うしかい座を司り、おとめ座のスピカとしし座のデネボラと共に春の大三角を構成する赤色巨星。

「改めて見ると、やはり美しいものですね」

 アーニャさんの視線に気がつき、思わず目が合う。
 とても不思議そうに私の顔を覗き込む彼女の瞳が、何だかおかしい。

「お嬢様にお付き合いして、星や星座の当てっこをしたことがありますから、多少は」
「フフッ。ハラショー!」

 キラキラと感激した様子で、アーニャさんは勢いよく私の手を取った。

「チヨは、ズヴェズダにも詳しいですね? すごいです」



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