白雪千夜「足りすぎている」
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269:名無しNIPPER[saga]
2019/11/24(日) 01:03:52.26 ID:Hn+oLRjQ0
 中央まで進み、立ち止まると、スポットライトがパッと私を照らす。
 直後に巻き起こる歓声。

 慣れというのは、怖いものだ。
 あれだけ私の心を惑わしたものが、こうして何度も受けているうちに感覚が麻痺してくる。
 それは、私を目当てとして発せられたものか、あるいは他の人達を応援するついでに向けられたのか。
 などと、無粋なことを考えてしまう余裕さえある。

 ありがたいものは、ありがたいと思えるうちに、大切にしておきたい。
 乾ききった人形の私にとって、アイドルとなって得るものはあまりに大きすぎた。

 この感覚に慣れきってしまう前に、私は――。

「皆さん」

 会場がしんと静まり返る。


「寒い中、お越しくださりありがとうございます。
 こんなにも大勢の方々が、こうして私を見てくれること、とても嬉しく思います」



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