白雪千夜「足りすぎている」
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237:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 22:42:05.02 ID:1/ZkFkMM0
「近々自身のプロジェクトが潰されてしまうかも知れないというのに、暢気なことだな」

 向き直ると、フンッと鼻を鳴らす常務と視線が重なった。
 対照的に、私は知らず笑みがこぼれてしまう。

「何がおかしい」
「ついでにもう一つ、お聞きしたいのですが」

 大袈裟に咳払いをしてみせ、私は姿勢を正した。

「あくまで仮の話ですが……
 もし、あなたに子どもがいて、その子がアイドルをやりたいと言った時、あなたは親として、その子に夢を見せたいと思うでしょうか?
 それとも、経営者として現実を示すでしょうか」


「仮定の話に答える義理は無い」
 そう言って彼女は席を立ち、こちらに背を向けたまま窓の方に歩を進めて立ち止まった。

「だが、今日付き合ってくれた礼に、特別に答えるとしよう。
 経営者としての仮面を外し、自分の子を贔屓して夢という名のエゴを押しつけるなど、公私混同も甚だしい。
 まったく馬鹿げた話だ」

「そうですね」

 私はクスッと笑い、ゆっくりと立ち上がった。


「ですが、それは一般論です。
 私が聞いているのは、あなたがどうしたいのか……あなたの今の答えは、答えになっていません」



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