白雪千夜「足りすぎている」
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235:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 22:33:53.42 ID:1/ZkFkMM0
 深いため息をついたのち、常務の話が途切れた。
 胸に去来する様々な思惑を咀嚼するかのような、形容しがたいほどに複雑な彼女の表情を見て、私は合点した。


「あなたはちとせさんに……お嬢様に、かつてのご自身の夢を託されたのですね?」


 かつて志希さんが揶揄したように、この人は自分から本音を開示するような人ではない。

 だが、その気づきは当初、小さな疑惑に過ぎないものだったが、今では確信に変わりつつある。


 なぜ、お嬢様に対し、過剰とも言える力を入れていたのか。
 志希さんが二人に、親子の匂いを感じ取ったのか。
 カップの持ち方に、既視感を覚えたのか。

 先刻海外から帰ってきた大企業の次期跡取り――聡明で理知的な、おじさまの傍にいた人。


「あなたはお嬢様に、ご自身を超えてほしかった……
 玲音さんが育てるお嬢様が、期待を超えるステージを披露することで、苦い過去ごと、ご自身の価値観をもう一度破壊されることを望んだ」



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