白雪千夜「足りすぎている」
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234:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 22:26:28.07 ID:1/ZkFkMM0
 どこかバツが悪そうにかぶりを振り、常務は言葉を続けていく。

「自慢するものではないが、努力は人一倍だった。
 だが、“好き”だけで戦えるフィールドではないと、ある時思い知らされた。
 反発していた父のもとに降り、経営者の道を選んでからは順風満帆……人にはそれぞれ、相応の役割があるのだと悟ったよ。
 同時に、自分のような誤りを、他の子達にもしてほしくないともな」

「誤りとは、分不相応な努力をして身を滅ぼす、という意味でしょうか?」
「容赦が無いな、君は」

 今度は常務は、声を上げて笑った。
 それはひどく自嘲的で、普段の威圧的な態度からは、まるで別人のようにも思えた。

「だが、そういうことだ。
 政府が働き方改革だなんだと騒ぎ始めた昨今の風潮は、私の掲げる経営計画にとって追い風だった。
 凡人に淡い夢を持たせ、いたずらに金と時間をかけてじっくり育てるのではなく、持つべき者がその才能に見合ったパフォーマンスを無理なく発揮できるように。
 それが社員のためであり、アイドル達のためであると信じる気持ちは、今でも変わらない」



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