193:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:11:15.86 ID:1/ZkFkMM0
アーニャさんは、それ以上何も言わない。
ただ、いつかの時と同じように――何か言いたいことがあるはずなのに、それを必死で我慢するような――。
しかし、今日のそれは笑顔ではなかった。
今にも泣き出しそうな、星空ではなく、氷のように寂しそうな瞳。
彼女の隣に立つアイツも、無言で立ち尽くし、私に何かを促している。
過去の清算、か――。
そうだな。この先、こんな気分に浸る機会はもう無いかも知れない。
「少し、話をしても良いでしょうか。
ちょっとだけ、昔の話……」
返事は無い。
だが、それが肯定を示す沈黙であることは、彼らの表情を見て分かった。
私は振り返り、遠くに広がる街の灯りを見つめた。
そして、その遙か北の先にある、私の生まれ故郷を。
「私は孤児です。
12の時に、天涯孤独の身となりました」
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