【けいおん!】梓「千変晩夏」
1- 20
35:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:01:31.14 ID:PR8wYl2Go
「あぁ、梓。いや、皆とこうしてまた集まれたのは嬉しいんだけど、今年こそ律と二人で夏祭りに行こうって意気込んでたから、ちょっと複雑な気持ちで……」
 苦笑いをする澪先輩の気持ちが何となく分かるような気がしました。それと同時に、とても意外な気がしました。
 私の知る澪先輩は、こうやって心にひっかかるような、何となく分かる微妙な気持ちを、自然な会話の流れで口に出来るような人ではなかったはずです。


36:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:04:21.48 ID:PR8wYl2Go
「澪先輩は、大学生になってから変わりましたね」
「そ、そうかな?」
「そうですよ」ふとさっきのやり取りを思い出して、「特に律先輩関係は、前よりずっと積極的じゃないですか。何かあったんですか?」
「!? べ、別に何もない! 何もないぞ!」
 慌てて手を振って否定する澪先輩でしたが、何か思い直したように、照れくさそうに頬をかきました。
以下略 AAS



37:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:06:06.72 ID:PR8wYl2Go
「……というより、十年一緒にいた今までが変わらなさすぎたんだよ」
 紅潮しきった頬を掌で押えて、澪先輩は続けます。
「でも勢いとはいえ、変えるきっかけが出来た。そのチャンスを逃したくなくてさ、もう少し自然に近づいてみよう、素直になれるよう頑張ってみようって思って」
 最近までは凄く恥ずかしかったけどね。とおずおず付け加えます。
「……皆、新しい環境になって、変わっているんですね」
以下略 AAS



38:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:09:21.23 ID:PR8wYl2Go
 ムギ先輩も律先輩も、澪先輩も変わっていく。成長。それを喜ぶのは至極当然な感情であるはずなのに、皆が私の知らない所で変わっていく。それがとても寂しくてしょうがない。
 いつか皆、葉桜が紅く染まっていくように、私の知らない先輩達となってしまうのでしょうか。あの優しくてほんわかと温かい唯先輩も、もしかしたらきっと……嫌。そんなの、絶対嫌だ……!


39:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:12:42.70 ID:PR8wYl2Go
 身体が震えそうになっていることに気付いて、私は慌てて考えを薙ぎ払いました。よそう、こんなのただの気の迷いだ。一人で考えるから変な穴にハマるんだ。私と澪先輩はよく似ている。変わりたいと思えるきっかけを訊けたら、きっとこんなモヤモヤもすぐ晴れてくれる。
「……澪先輩」そう思うが早いか、言葉のまとまらない内に、私は澪先輩の名前を呼んでいました。
「? どうした?」
「あの、みお、澪先輩は……」
 それから先の言葉が舌をつかず、澪先輩は首を傾げて私の言葉を待ちます。


40:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:13:17.21 ID:PR8wYl2Go
「あの、澪先輩はどうして……!」
 何でもいいから何か言ってしまおう。後で補足を入れたらいい、そう思い声を出しました。が、
「おーい! 着いたよーっ」
 そう決心した瞬間、唯先輩が大きな声で私たちに呼びかけました。


41:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:16:45.51 ID:PR8wYl2Go
「ラッキー! ちょうど橋の端っこになったぞー!」
「りっちゃん、それは寒いよ……」
「わざと言ったんじゃないやい」
 そう言う内に、前を歩いていた先輩達の歩みが止まりました。ちょうど、何の妨げもなく花火を一望できる場所です。
「ごめん梓、何か言った?」澪先輩が再び私に尋ねます。
以下略 AAS



42:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:17:55.11 ID:PR8wYl2Go
「言わなくてよかった……」折角コンプレックスを払拭しようと頑張ってるのに、私の気の迷いで足を止まらせては申し訳が立ちません。自分の悩みを人に丸投げなんてしては、解決なんて夢のまた夢です。
「……チャンス、かぁ」
 その一語が、余計な重みを持ってのしかかってくるような気がしました。
 もし私に変わるチャンスが訪れても、それを受け入れることが出来るだろうか。
 ……ただ一人変わらずにいてくれている唯先輩にも、もしその日が訪れたら、私は笑って見送らなければならないのだろうか……


43:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:21:36.12 ID:PR8wYl2Go
「あーずにゃん」
「わっ」
 物憂げに星を見ていたら、空っぽになっていた右隣に、いつの間にか唯先輩がやってきていました。
「良かったぁ。一人で見に行っちゃうのかと思ったよ」
「そんなことしませんよ。花火は誰かと見た方が良いに決まってます」
以下略 AAS



44:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 23:23:12.51 ID:PR8wYl2Go
 二人とも無言のまま、花火は刻一刻と迫っていきます。心の中で手持ちぶさたを言い訳に、唯先輩の横顔を眺めました。
「……唯先輩は変わりませんね」
「えぇ〜そうかなぁ。私、大学生になったんだよ?」
「じゃあ何か変わったんですか?」
「えーっと……アイスを三口で食べれるようになった」
以下略 AAS



63Res/30.46 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice