17:>>15 マス開けミスってました。スマソ
2019/11/10(日) 22:34:29.78 ID:PR8wYl2Go
そう思っていると、どこからともなく古典風な笛や太鼓の乾いた音色が聞こえてきました。きっとお神輿が担がれ始めたのでしょう。
「お祭り、始まったみたいですね
「あ、ほ、ほんとだっ! 早く行こうよっ、ね、ねね!」
「そ、そうね。私も久しぶりだし、ちょっとでも長く見ていたいわ!」
「ささ、早く行こあずにゃん!」
18:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:36:14.62 ID:PR8wYl2Go
夕方のふわふわした暖かさが街へ溶け出したからでしょうか、薄灰色だった雲は目を射差すような橙色に染まり、その日光と盆提灯、屋台からこぼれた白色蛍光が混ざり合って、その光景はまるで夢や思い出の一シーンのように、全景がぼんやり滲んだ、とても幻想的な風景でした。
19:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:37:19.61 ID:PR8wYl2Go
「あずにゃん、たい焼き食べる?」
「ありがとうございま……って、いつの間にそんなに買ったんですか!?」
気付けば唯先輩は持てるだけの食べ物を買ったという風体で、さながら食べ物の着ぐるみをまとっているかのようになっていました。
「まま、好きなの選んでよ。たこ焼きたい焼きさいきょう焼き、フライドポテトにスーパーポテトもあるよ」
「豊富ですね……」
20:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:38:47.75 ID:PR8wYl2Go
「じゃあ、たい焼きを一つ」
「あいまいど! お嬢ちゃん可愛いからタダね!」
「誰ですか」
そう言って受け取った一尾のたい焼き。紙ごしでも伝わる温かさは、屋台から貰った出来上がりも同然の温もりでした。
……もしかして、私が食べると思って、最後に買ってくれたのかな……?
21:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:39:53.61 ID:PR8wYl2Go
たい焼きを食べ終わる頃には、唯先輩の手元にはりんごあめしか残っていませんでした。食べている最中にムギ先輩にも譲っていたのですが、それにしたって尋常じゃないスピードです。
「あずにゃん、そんなにじーっと見てどうしたの?」
「一瞬で食べ物が消えてたらじーっと見たくもなります」
そう言っても唯先輩は依然、小首を傾げて、自分の口元手元に目線をやっていました。
「あっ、分かった! りんごあめも食べたいんだ。欲しがりさんめ〜」
22:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:40:44.95 ID:PR8wYl2Go
「しょうがないなぁ〜。はい」
「……はい?」
「私のアメあげるよあずにゃん。二人で分けっこしよ?」
「なっ…………!?」
とっさに私へ差し出しているアメに目を落としました。形はあまり崩れていませんが、反対側の輪郭はもうしなっと曲がり、所々が濡れて妖しい光を放っていました。いや、この濡れてるのって、もしかしなくても……!
23:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:42:58.58 ID:PR8wYl2Go
ど、どうしよう……。でも唯先輩が困ってるって言うなら、助けてあげるべきだよね……? そう、これはあくまで人助けなんです。あくまで唯先輩を助けるために……
「あ、ムギちゃん。リンゴあめ食べる?」
「いいの? じゃあお言葉に甘えて〜」
「あっ……」
悩んでいる間に、あめはムギ先輩の口に入っていき……
24:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:44:32.71 ID:PR8wYl2Go
「たくさん食べたし次は遊ぼうよ!」
「もう、ちょっとは休みましょうよ」
「ダメだよ〜。お祭りは無駄なく遊ばないと」
ふんすと鼻を鳴らして、唯先輩はゲームの屋台がある左の小路へと入っていきました。
「もう、唯先輩は相変わらずですね」
25:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:45:33.14 ID:PR8wYl2Go
「唯ちゃん、梓ちゃんと会えるのをすごく楽しみにしてたもの。久しぶりにあずにゃんに会える! って事あるごとに言ってたのよ」
「……どうせ、ひっつく相手がいなくて寂しがってただけですよ」
「うふふ、そうね」
そう言うと、雑踏の前から唯先輩の呼ぶ声が聞こえました。
26:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:47:40.71 ID:PR8wYl2Go
「あずにゃんムギちゃん、人で溢れちゃってるよー……」
唯先輩が退いてきた先では、隙間も無いほどの人の群れ。ちょうど近くで神輿の掛け声が聞こえるので、きっとそのせいでごった返してしまっているのでしょう。
「これを抜けるのは大変そうね……」
人混みを一目見て、ムギ先輩はそう呟きました。
「う……」
27:名無しNIPPER
2019/11/10(日) 22:51:01.29 ID:PR8wYl2Go
あーずーにゃん」
ふわっと、手に温もりが重なったような気がして、見ると唯先輩が、私の右手をすっぽりと包んでいました。
「これならはぐれないかなぁ、って思って……。ダメだったかな」
そう言って唯先輩ははにかむように笑いました。さっきの不安なんて霞にしてしまうような、優しい、照れくさそうな笑顔。固まった身体が徐々にほぐれていく気がしました。
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