9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/04(月) 22:22:47.07 ID:c2i0tNU+O
ドッゴォアアアアゴォオオアアアアッ!!!!
「きゃああああっ!?」
「この程度のドリフトで喚くんじゃねぇ!!」
猛スピードで山を下る。
雪道でケツが流れるが、流石は四駆。
アクセルを踏めば真っ直ぐに向き直る。
ビビってブレーキさえ踏まなければ問題ない。
そこで、対向車とすれ違った。
白黒のパンダトレノ。ハチロクだ。
正式名称はTOYOTAスプリンタートレノAE86。
しかもGT-APEXのスリードア仕様だ。
後輪駆動車で今となっては珍しい車種である。
尋常じゃないスピードだった。あれはまさか。
「拓海くん、来てくれた……」
どうやらそのまさか、だったらしい。
電話から数十分でもうここまで登るとは。
どうやら俺は、誤解していたらしい。
捨てた女の為にここまで必死にはなるまい。
ならば、なつきはまだ捨てられていない。
それがわかると、なんだか嬉しくなった。
ならばせいぜい、悪役を演じてやろう。
「へっ……どんなクルマかと思えば。古のポンコツじゃねーか。あのクルマじゃあ、この俺のセリカGT-FOUR についてくるのは無理だ」
雪道に四駆が強いのは世界の常識。
とはいえ、後輪駆動車も捨てたものではない。
路面の状態に素直に反応するFRは腕さえあれば、スライドを上手くコントロール出来る。
「あと、コーナーを3つも曲がれば藤原のクルマは見えないくらいに消え去っている筈さ」
コーナー3つで追いつかれると予想していた。
しかし、藤原のテクは俺の予想を超えていた。
ここまで登ってくるのにかかった所要時間を考えれば不思議ではないが、実際に後ろに張り付かれてみると、その速さに驚愕を禁じ得ない。
「ゲホッ! ゲホッ!」
思わずむせてしまうほどのプレッシャー。
迫り来るリトラクタブルのヘッドライト。
みるみるうちに追いつかれて、煽られて。
たしかにあいつは、なつきを助けに来た。
「くそっ! 金魚のうんこじゃあるめぇーし!」
ならば、俺の役目はこれで終わりだろう。
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