少女「お兄、すき」男「そうか」
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99: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2019/09/24(火) 04:15:48.48 ID:UvSy/elD0

薬屋「無論私自ら率先したのではない。……妹の存在を知った役人が、けしかけてきたんだ」

薬屋「男には言っていなかったね。私の妹は、不治の病に冒されていてさ……その余命はひと月前」

薬屋「どうせ死ぬ人間なら有効活用した方がいいだろう、だと。正直はらわたが煮えくりかえるかと思ったが、それで薬の完成に近づけるなら──男を手に入れる道が近づくなら……そう考えたら、つい訊いていたよ」

薬屋「新しい治療薬の効果を見たいから協力してくれ、とね。妹は快く引き受けてくれた。お姉ちゃんの言うことなら間違いはないからと」

男「………」

薬屋「…結果は惨憺たるものだった。理性も記憶も失い、ただ暴れるだけの獣と化した。丁度手頃な犬と狼にも投与し、同士討ちをさせて沈静化をするはめになるほどだ」

薬屋「その後の処理は国に任せたが……ふっ、お前が連れ帰って来た時は心底驚いたよ」

薬屋「まさか右も左も分からないような頭になって戻ってくるとは!男と共に親子ごっこを始めている自分の妹を見るのは……実に可笑しな気分だったね」ククッ

男「………お前、自分が何を言ってるか分かっているのか?」

薬屋「理解しているよ。心配してくれたのか?平気だ、私は今世界で一番冷静な人間であると自負しているくらいだ」

薬屋「それに私を責めるのはお門違いだ。私のおかげでその子は予定よりも長く生きられた。感謝されこそすれ、非難される謂れはない」

薬屋「……もっとも、さっきの投薬が無ければまだ生きていられただろうけど」

男「少女をここまで連れ出したのはお前か」

薬屋「そうだよ。最後の最後、実験に付き合ってもらったんだ。よほど男のことが好きだったんだろうね、男がか弱いあんたを置いていこうとしていると唆したら真っ青になっていたよ」

薬屋「…もうすぐ命が無くなると教えた時よりも」

男「……」



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少女「──お兄、ほしい」

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男(あれは、そういうことだったのか)

男(じき、自らが消えると分かっていて最後に求めた…愛を向けてくれる存在)



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