少女「お兄、すき」男「そうか」
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39: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2019/09/11(水) 21:34:24.58 ID:ULa3Qe3C0

薬屋「………」

薬屋(………)

薬屋「………ふぅ」

薬屋「今から5年も前のことだ」

薬屋「当時、男には妻と子供がいた。妻とはあちこち駆け回る傭兵業の中で出会ったらしい」

女盗賊「それが女と娘か」

薬屋「……他にも察しないか?」

女盗賊「え?」

薬屋「彼らが出会ったのはこの町だ」

女盗賊「…なるほど」

薬屋「そうして二人はこの町に居を構え、子を成し、幸せそうに暮らしていたよ。とは言え、仕事柄男が家に居ることはほとんどなかったがね」

女盗賊「ウチだったら…寂しいかなぁ。やっぱ旦那とは毎日顔合わせたいよ」

薬屋「…そうかもな。だが妻は気立ても良く、会える短い時間の中で愛を深めていったそうだ」

女盗賊「たまにしか会えないからこそ育まれる愛……ん〜、ロマンチックだねぇ…」

薬屋「……それがいけなかったんだよ」

薬屋「男は仕事が仕事なだけに、リスキーな依頼を引き受けることもあった。その内のどれかが……厄介な連中に楯突いたとみなされたらしい」

薬屋「報復として、妻と娘が殺された」

女盗賊「……」

薬屋「男が帰った時には、血まみれの二人が…見せしめのように吊るされていた、と」

女盗賊「殺した相手を吊るす……それって」

薬屋「そうだ。国に指名手配されていた殺戮集団、"血吸い"の手口だ」

女盗賊「でも血吸いの連中は数年前崩壊したって………え、ちょっと待って…まさか……」

薬屋「……あぁ。壊滅させたんだよ、あの傭兵が」

薬屋「それもたった一人でな」

女盗賊「……うっそぉ……」

薬屋「……今でも思い出すよ。男が幽鬼のような足取りでここに帰ってきたときのこと」

薬屋「自分の血なのか誰の返り血なのか判別出来ないくらい酷い状態だった。生気のない顔で、生きて帰ってきたのが不思議なほどさ」

薬屋「それからだね。男が誰も傍に置かなくなったのは。自分の手じゃ何も守れないから、何にも近付かない、近付かせない……そんなことを宣うようになって…」

女盗賊「……そうか。つまりあの人は、少女のことを……」

薬屋「重ねているんだろう。かつての自分の娘と。……そうと気付いていながらも尚、な」

女盗賊「………」



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