反物質男「またお前に会えて嬉しいよ」対消滅女「……なにカッコつけてるのさ」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/07(土) 01:27:12.65 ID:qoKz8IIqO
「うお……登ってみると案外高いな」

この世界に壁はない。だが、地面はあった。

「垂直に落下すれば、地面だって壁だ」

要はベクトルの問題だ。エネルギーの向き。
横からなのか上からなのかの違いに過ぎない。
だからきっと、上手くいく。じゃなきゃ困る。

「でも、もし失敗したらクチャッてなるよな」

クチャッと地面にキスする羽目になる。
そう考えるとなんだか怖くて小便を漏らした。
するとなんだかスッキリして、決意を固めた。

そうさ。こんな世界に未練はない。
クチャッてなったら、それまでだ。
それでおしまい。その方が幸せだ。

尿降って、決意固まるとはこのことである。

「よし……いくぞ」

壁をすり抜ける可能性はゼロじゃない。
2連続で成功する可能性もゼロじゃない。
もう一度見せてやるよ、アインシュタイン。

神が振る、サイコロってやつをよ。

「Let's! 対・消・滅!」

我ながらひどい掛け声だとは思うけれど。
来た時と同じ爆心地めがけて積み重ねた石山からダイブした俺は、地面に激突する瞬間に物質世界に横たわる自分自身の姿を幻視した気がして、そして落下の衝撃で意識を失った。


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