20: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2019/08/19(月) 23:19:53.15 ID:rNK9Zl/t0
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「すごい人……皆さん、とても楽しそうで……。私もいつか、大切な人とこんな場所を訪れる日が来るのでしょうか……なんて、いけませんね」
三船さんの最後の仕事……少なくとも彼女自身はそう思っているであろうそれを遠巻きに眺める。
独特のテンポ感と安定したトーク、そして時折見せる恥じらい。
彼女が元来持つ魅力と、いくつもの仕事を経験して得たものがしっかりと発揮されている良いリポートだと思う。
何より、堂々と穏やかな笑みを浮かべて歩く姿が、ただ嬉しかった。
この後待ち受けていることに対する緊張はあれど、まずは彼女の仕事ぶりをしっかりと目に焼き付けなきゃいけない。
これが最後かもしれないことに、変わりはないのだから。
「お疲れ様、でした……!」
撮影の全行程が終了し、三船さんは大きくお辞儀をする。
そこに僅かでも万感が含まれているのであれば、それはプロデューサー冥利に尽きるというものかもしれない。
これから僕は、彼女に一つのお願いをする。
しくじるなよ、と小さく呟いて、ゆっくりと足を進めた。
「三船さん、お疲れ様です。本当に」
「プロデューサー、さん……」
寂しげに笑んで、三船さんはこちらに向き直る。
僕がこれから切り出す話くらい、彼女だってきっとわかっている。
それなのに、そんな顔をするのだ。
「少し、歩きましょうか。ここだとスタッフさんに気を使われちゃいます」
「……はい」
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