7: ◆yufVJNsZ3s
2019/08/19(月) 22:26:21.80 ID:G6ax3z7W0
「……ぁ、だ、ぃ、ぅお」
大丈夫と言おうとしても言葉にはならなかった。喉から血が戻ってきている気がする。ここもまた、痛い。
「あまり無理しないでください」
眼鏡の女性が言う。
「私たちがあなたを助けました。あなたは一命を取り留めたんです。恢復までには長い時間を擁します。ゆっくり療養していきましょう」
子供が私の手を握ってきた。小さく、暖かい、手。海の上を揺蕩う間は決して手に入らないもの。それだけで涙が滲む。
「もう大丈夫……ですっ!」
「声が出せないか? 喉の裂傷のせいかもしれないな。紙とペンをもってこよう」
銀髪の女性は、透き通るほどに白い肌と、同じくらいに透き通る怜悧な声で呟く。
「水はいるか? いるなら首を縦に、いらないなら横に」
野太い声で男性が尋ねてくる。私は首を縦に振った。それに対して男性も満足そうに頷く。
顔にはいくつか傷があった。そのせいだろうか、僅かに右の頬と、口元、眼尻の動きが引き攣っているようにも見える。左の外耳も耳たぶのあたりが欠けているし、額から左眉にかけても裂傷が二本。
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