5: ◆yufVJNsZ3s
2019/08/19(月) 22:25:01.29 ID:G6ax3z7W0
がらり、ぴしゃんと扉が開く――そこで私は、ようやく、自らが部屋にいて、ベッドに寝かされていることに気が付いた。硬く濡れた岩礁とは異なる柔らかさと温かさ。
「あ、おっ、お目覚めです! お目覚めですぅっ!」
枯れ草色の上着、濃緑の袴を身に着けた、子供だった。彼女は私の姿を見るや否や、叫んで出ていってしまう。この痛みを何とかしてほしいのに。なんという不幸か。
しかし、不幸な私はやはり、幸いにも、人間であったらしい。激痛は波こそあるものの、ゆっくりと引いていって、なんとか歯を食いしばれば耐えられるほどまでには落ち着いてきた。
部屋の外を走る音。数秒の間があって、部屋へとなだれ込む人影。
「おい、医者が次に来るのは明後日だぞ、クソが」
「お目覚めになったことを喜びましょうよぅ!」
「町医者を呼んでくるか? 問診くらいはできるだろう」
「やめたほうがいいと思いますよ。私たちの身体は機密の塊ですから」
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