217: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/03/21(土) 11:11:02.04 ID:pQ00XHC/0
疑問と苛立ちの両方が、殆ど同時にやってくる。それは悪天候の日、濃い灰色の暗雲から、水平線のさらに向こうに落ちる稲妻の群れに酷似していた。
次の加賀の言葉も、そして私自身の言葉も俟たずして、ベンチから立ち上がった。
「……ひどいご挨拶じゃない」
「そうね。申し訳ないとは、思っている」
真実味のない言葉だった。加賀はこちらへ視線を向けず、射形も、やはり、崩さない。先ほどから数分はその体勢でいる。
肩を掴んで「こっちを見ろよ」とやりそうになる衝動を抑える。夕方、演習の終わり、霧島との会話が脳裏をよぎったからだ。
在り方。
加賀は筆頭秘書艦だ。彼女の肩には、責任がある。呉の名前と誇りを背負っている。なにより、彼女には呉の他の艦娘たちを導かなければならない。そんな彼女の言動がこれ? まったき信じられない事実。
無論、全てにおいて、どんなときでも、その役割で居続けることは難しいだろう。立場が求めるふるまいと本心は必ずしも一致しない。いまの加賀が筆頭秘書艦の仮面を脱ぎ捨てている可能性だって否定はできない。
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