1: ◆yufVJNsZ3s
2019/08/19(月) 22:21:03.30 ID:G6ax3z7W0
人間は慣れる生き物だ。そうでなければ生きていくことはできない。
傷口に塩水の沁みる痛みも、いつの間にか感じなくなってしまった。
ならば私のこの不幸にも、いずれ慣れていくときが来るのだろうか。
痛みどころではなかった。左上腕から先の感覚は消失している。眼で確認するのも億劫で、私は自己診断プログラムを走らせた――腱断裂、解放骨折及び出血多量。A3度の危険域。左足表皮と腰骨神経系もA1相当の被害を受けていて、私はそこで走査を打ち切る。
怪我をC1からA3までの九段階で評価する樫村スケールは、あくまで自動修復作用をどこにどれだけ割り振るかの判断基準でしかない。自動修復よりも自壊速度が上回っている現状を鑑みるに、最早意味がないのは明白だった。
不幸だわ。
口癖となってしまっている言葉は、いまこそ似合っているように思えた。
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2: ◆yufVJNsZ3s
2019/08/19(月) 22:22:53.22 ID:G6ax3z7W0
敵性攻撃群の襲撃を受け、部隊は壊滅。仲間を庇いながら抗戦を続けるにも限りがあった。ついには落伍し、気づけばどこかの岩礁に乗り上げ、迫り来る自らの死と向き合うばかり。
扶桑お姉さまは無事だろうか。満潮は。時雨は。加賀は。鈴谷は。
爆炎と血飛沫は、即ち死とイコールではない。私たちは心が折れない限り何度でも立ち上がれるし、立ち上がってきた。そうあるべくしてあるのが艦娘なのだ。
3: ◆yufVJNsZ3s
2019/08/19(月) 22:23:23.19 ID:G6ax3z7W0
「発見! 要救助者、はっけーん! 座標は今飛ばした、近ェのは……グラ子か!
大淀と合流してこっちゃ来いやぁ!」
潮騒に負けじと声が響き渡る。
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