【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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28: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:37:03.81 ID:oj63shz20
「……初めてファンの子に嫉妬したわ」
「あの女性にか」
 夏葉は無言で頷く。頷いて、俺の服の袖を取り、下から覗き込むように視線をぶつけてきた。

「私は、アナタが好きよ」
「ああ」

「アナタはどんな時も隣にいてくれた。気持ちに応えてくれた。欲しい言葉をくれた。私の望みを、叶えてくれた」
「……ああ」

「だったら、アナタが私に望むものはなに?」
 夏葉は右手を俺の胸に、左手を自身の胸に手を当てた。

「アナタは私の望みを叶えてくれたから。私はアナタが好きだから。アナタが何かを望んでくれるなら……私はそのために……」
「……夏葉」
「……その、ために……」

 夏葉の言葉は途切れて消えた。その体は震えている。俺は夏葉が何を言おうとしたのか理解していた。ひょっとすれば、最初に婚約を切り出した時に、彼女はその未来を思い描けていたのかもしれない。

 『アナタの為に生きてもいい』。それが夏葉の言おうとしたことだ。

 誰かの為に生きる。俺の為に生きてくれる。それを新しい夏葉自身の『夢』にする。その考えを彼女は口にしなかった。今も言葉にしようとして、最後の一線でそれを躊躇している。

 ――俺はそのことが、たまらなく嬉しかった。

「俺も、夏葉が好きだよ」
 夏葉が好きだ。夢を真っ直ぐに追いかける彼女が好きだ。自分自身を信じられる彼女が好きだ。どこまで行っても、自分の在り方を誰にも譲り渡さない彼女に、俺は淡い恋をした。

「俺が夏葉に望むものは……」
 だからあえて言おう。俺の望みを。彼女に伝えよう。

 俺は一度目を閉じて、開き、右頬をぬぐった。

「夏葉。どうか、幸せなままでいてくれ」



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