【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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◆/rHuADhITI
[saga]
2019/08/18(日) 02:36:28.17 ID:oj63shz20
俺はじっと考え込む。
やはり真っ先に考えたのは何ひとつ変わらない今現在だ。しかし、アイドルとプロデューサーでなければ、ふとしたきっかけで一線を越えて、結婚まで漕ぎ着けてしまう可能性。そんなものだってあるような気がしてくる。
だが無意味な夢想だ。俺はそう結論づけた。
「俺たちはアイドルとプロデューサーだよ。そうじゃない道はありえないし、その道こそが最良の道だったと……俺は信じている」
そう。ありえないのだ。俺は俺であるかぎりアイドルに憧れるし、夏葉も夏葉である限りアイドルを夢見ることになる。そうでなくては、もはやそれは別人たちの話だ。
俺はようやく先の夏葉の問いに答えられる気がした。
「夏葉は間違いなく、幸せの鐘でいられてたよ」
「……え……」
「あのファンのカップルさ、幸せそうだっただろ。もう何年も昔の仕事で、今の彼らが笑っていられる。それが夏葉の成したことだよ。夏葉の行動や想いは、みんなの中に残ってくれている」
俺は黒い海の先を見通そうとした。この太平洋を越えて、放課後クライマックスガールズの歌を届けに行ったこともある。
「夏葉が歩いてきた道は、紛れもなくかけがえのない物だった。だから、その空虚さを過去に求めるべきじゃない」
――燃え尽き症候群、と夏葉は自身を評していた。それは少し違うように思う。彼女は道に迷っているのだ。たとえば山の頂に登りきったなら、そこからたどれる道は下り坂しかない。ただひたすらに登ってきた彼女が迷うのも、仕方のないことなのかもしれない。
道に迷って、不安に駆られて、迷っていなかった過去を顧みる。それは誰しもがする行いであり、この九年間ついぞ夏葉がしなかったことでもある。
有栖川夏葉は普通の人間だ。自身の振る舞いに悩み、時に感情的に感傷的になり、当たり前のように痛みや辛さを感じている。
有栖川夏葉は特別な人間だ。努力の為に人目を憚らず、時に完膚なきまでに自分の非を認め、当たり前のように笑っていられる。
その二面性を造っているものを俺は知っていた。それは彼女が心より焦がれる『夢』だ。『夢』に対する真摯さこそが、夏葉を普通で特別な存在にしていた。
「……夏葉に必要なのは、『こうなりたい』っていう未来だよ」
俺がそれを口にすると、夏葉が弱く自分の拳を握り込んだ。
堂々巡りして同じ問題に戻ってきた。それはわかっている。大学に向かう車の中で、夏葉が『未来を想像できない』と言った地点から一切進んでいない。
夏葉は細い指を口に当てた。
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