92: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 03:03:30.43 ID:OJA0wgUK0
「ねぇ、何を隠してたの?」
プロデューサーは答えなかった。
彼はいつだって、直接的に答えを明かすことがない。
彼の行動の裏側には常に、漠然としたものを言語化することへの拒絶があった。
輪郭のぼやけたものを言葉にすることに伴う副作用を、極度に恐れていた。
曖昧を曖昧のままに放置することで、身に災いが降りかかるのを防いでいたのだ。
しかしその態度は、この質問への返答を与えることを不可能にしていた。
それでは埒が明かない。
「プロデューサー」
「別にさ、答えを直接言ってくれなくたっていいんだよ」
「ヒントでいいんだ」
「ねぇ、プロデューサーは何を隠してたの?」
顔を上げた彼と目が合う。
彼の表情には憂鬱と倦怠感が刻まれていた。
その表情のまま、やおら口を開く。
――本心を隠すのには、別に嘘じゃなくたっていいんだよ。
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