双葉杏「透明のプリズム」
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91: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 03:02:59.31 ID:OJA0wgUK0


「いつって言われても、範囲が広すぎるよ」

「『緑色の空』の話をしたあたりだよ」

「ずいぶんと前だね」

「でも、覚えてるんでしょ」


彼は、そうだなぁ、と右頬を掻く。
言葉を練り終わったのか、ため息交じりに口を開いた。


「強いて言うなら、嘘を吐いてはないかな」

「……それ、本当?」

「今さら嘘は吐かないよ」


これは私にとって衝撃だった。
彼は嘘を吐いていない。
解けかけていた糸が再び絡まり合ってしまった。
彼が嘘を吐いていないということは、どういうことなのだろう?


「じゃあ、何か隠してたの?」
 

彼の目には迷いが浮かんでいた。その態度から察するに、彼が何かを隠しているのは明らかだった。
私が知りたいのはその先、具体的に何を隠しているか、なのだ。
彼の迷いはどうやら、その先についてどこまで言及するか、に関するものらしかった。




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