87: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:59:47.57 ID:OJA0wgUK0
「大人はね、ずるいんだ」
これは彼の本音だ。
言葉を聞き届けたその瞬間に、私は直感で悟った。
嘘でも何でもない、真実を端的に言い表した言葉だ。
その言葉を発したときの彼の態度が、あまりに普段と異なっていたのだ。
私はそこに、どれだけ強い力を加えてみても風を掴むようにすり抜けてしまう、底知れない彼の本質を見た。
あの日――彼が緑色の空の話をした日から、彼の全身を巡っていたひとつの信念を、私は垣間見たのだ。
行動という形で外の世界に現れていたものは全て、信念という名の一本の大動脈に支えられていた。
当時の私――十七歳の私には杳として知れなかった彼の本質。
あの頃から二年が経った今の私は、彼の軸というものを知っている。
有体に言ってしまえば、彼は最初からずっと、本心を嘘で隠していたのだ。
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