双葉杏「透明のプリズム」
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84: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:57:54.55 ID:OJA0wgUK0


私はカフェの二人席に座っていた。
プロデューサーがどうしても観たい映画があるというので、それに付き合っていた。
上映後に映画館近くのカフェに寄って、プロデューサーが会計を済ませるのを席で待っていたのだった。

「緑色の空」のなぞなぞの答えを見つけて以来、私はよくそのことに思いを巡らせていた。
答えが分かってしまったのだから、今更何を考えることがあるのか、と思われるかもしれない。

私が考えていたのはその答えについてではない。
何故、彼があんななぞなぞを私に出題したのか、についてだ。

大した理由はない、と投げやりな態度で処理しても良かったのだろう。
しかし私の頭の中には、彼がなぞなぞを出題した動機に対する疑問が尽きなかった。

果たして本当に、彼は特に理由もなくあんななぞなぞを出題したのだろうか?
それにしてはおかしい点がある。
彼は、答えを言うのを渋っていた。
しかも最終的に、その答えを明かさなかった。
あまりに不可解だ。

多少渋るくらいならまだ分かる。でも、たかがなぞなぞの答えぐらい、その場で言ってしまう方が禍根を残さないはずだ。
あの日、プロデューサーが答えを口にすることは無かったのだし、教えてくれそうなそぶりも見せない。

違和感を感じる点はまだある。
そもそも、車の中で突然なぞなぞを出すのも変だ。
あのときの私は暇を持て余していたからすんなりと受け入れたけど、ものぐさの私にあんななぞなぞを出題することだって不審だ。
普通の私なら、耳を貸そうとすらしなかったのかも知れないのに。

不可解な点が多すぎるのだ。
同時に私は、その違和感を全て打ち消してしまえるような、たったひとつの答えがあるような予感を感じ取っていた。
思考の末、私はひとつの仮説に吸い込まれていく。


――彼は初めから、私が答えを出すことに期待をしていないんじゃないか?


いや、むしろ、彼は私に、答えを出して欲しくすらないんじゃないか?





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