82: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:56:53.85 ID:OJA0wgUK0
☆
炎と空と人の一生は似ている。
炎。
1500℃の炎は青色だ。
温度が下がれば、炎は赤色になる。
やがて燃え尽きると、そこには消し炭の黒が残る。
空。
昼間の空は青色だ。
太陽が傾き始めると、空は焼けるような赤色に染まる。
やがて日が沈めば、そこには黒が残される。
人はそれを夜と呼んでいる。
人。
日本語では若さを青で表現する。
やがて年を取れば、その青は消え去って、赤が残る。
その赤は、いつかは黒になる。
人はそれを死と呼んでいる。
どうしてこんな話をするのかって?
もっともな疑問だ。
こんなの、杏らしくない。
これは、プロデューサーの受け売りだ。
彼はこういうことをよく言うような人間だった。
考察や思索で逐一アップデートされる円熟した価値観と、その思索により得られた結果を嬉々として私に語るような子供っぽさを、自身の中に共存させていた。
彼がこの話をしたのはいつだったか。
どんな場所で、どんなタイミングでその話をしていたかを、私はよく覚えていない。
彼がその話をした理由だって、彼の気分によるものだったのだろう。
しかしこの話は、この話だけは、私の脳裏に深く刻み込まれているのだ。
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