双葉杏「透明のプリズム」
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77: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:53:13.06 ID:OJA0wgUK0



「でもね、プロデューサー」

私は、彼に外堀を埋めるという行動を選択させたその理由を知っていた。

――それはひどく独善的な理由だ。
ものすごく単純で、笑ってしまいそうになる理由。

彼は、私が彼を選択すると確信していた。
そしてそれは、彼自身の希望的観測によるものだ。
彼は「もしもの話」を、私に選択肢を与えるつもりで話したのではない。
彼が口にすべきだった言葉は、おそらくこうだ。


――やっと俺の部署に杏を受け入れる余裕が出来たから、戻ってきてくれ。


彼は本来、私に対して、「自分のところへ戻ってきてほしい」と頼み込むべきだった。
でも彼はそれに類することは口にせず、「もしもの話」を持ち出した。
彼がその真意を、わざわざ「もしもの話」という建前をもって隠したのは何故か。




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