双葉杏「透明のプリズム」
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54: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:38:20.56 ID:OJA0wgUK0







選択を保留にしたはいいものの、私はどちらを選ぶかを決められずにいた。
選択肢のどちらも私に大した影響を及ぼさないことは分かり切っているのに、如何せん保留を選んでしまったせいで、どちらかを選ばなければ引っ込みがつかなくなってしまったのだ。

その日を境にプロデューサーの態度が変わった――なんてことはなくて、彼がたとえ話をする以前と以後で、別段彼の態度に違いは見受けられなかったし、返事を急かされるようなこともなかった。
ただ、返事を急かされないからこそ、選択を保留し続ける権利を与えられているからこそ、私は選択する義務をしばらくの間負い続ける羽目になった。

ひたすら保留し続けて、それで時間が経つのを待って、忘れてしまったふりをしてしまっても良かった。
あるいは、本当に忘れてしまっても良かったのかもしれない。

私が選択の自然消滅を拒んだのは、プロデューサー以上に私自身が私の選択を待っていたからだ。
この二択問題に答えを出すのは、何よりも自分自身のためだったのだ。
それは自問自答にも似ていた。自問自答であり、しかしその結論は直接未来の自分を拘束する。
よくある話だけれど、選択の自由がかえって私を束縛しているような、逆説的な状況だった。




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