52: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:37:16.36 ID:OJA0wgUK0
私はメロンソーダを吸っていたので、すぐには返事ができなかった。
飲むのを一旦中断して、息を吐き出して、それからやっと、質問の意味を飲み込めた。
額面通りに受け取るなら、私は軽い気持ちで返事をすれば良かった。
空返事や愛想笑いで受け流しても問題はなかった。
でも、字面のままに受け取ってしまってはいけないほどに深い意図が含まれている言葉であることを、私は察知していた。
「えっと、え?」
「もしもの話だよ。宝くじが当たったらとか、そういうタイプの話」
プロデューサーはたとえ話を付けてまでして弁明している。でも、私は分かっていた。
その弁明は、嘘だ。
これはもしもの話なんかじゃない。
プロデューサーは、やろうと思えば本当に私の担当に戻れるのだ。
100%そう言い切れるわけじゃないけれど、それでも私はほとんど確信に近いものを感じていた。
だって、そんな無意味で誰も得をしないようなたらればを人に向かって尋ねるのは、あまりに不自然だ。
彼は言葉をじっくり選んで意思疎通を行うような人間で、ひと時の思い付きや気まぐれで私に話しかけるようなことは決してしなかった。
彼は私に選択を迫っているのだ。
元プロデューサーの担当に戻るか。
それとも、今のプロデューサーの担当アイドルのままでいるか。
私は彼の回りくどさに呆れながらも、考えることに時間を割いてみる。
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