双葉杏「透明のプリズム」
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48: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:33:58.55 ID:OJA0wgUK0



それは青色だった。

私には青色に見えた。

とめどない青色。

触れたら消えてしまうような、水泡のような青。

世界の果てから果てまでを、どうしようもなく覆い尽くしている青。

――彼の眼の奥には、そんな群青色が揺蕩っていた。

それはきっと、その青色の感情はきっと、若さだとか、怯えだとか、そういった言葉で形容できるような、ひどく人間的で血の通った感情だったのだと思う。

私はその青を、初めて見た。



「ずっと、間違ってたよ」


「お前は何にも興味が無くて、何につけても無気力で、でも惰性でアイドルを続けてるんだと思ってた」


「間違ってたんだ」


「それは本物の杏じゃ、なかったんだな」


「事務所ですらゴロゴロだらだらして、でも飴玉をくれてやると妙にやる気を出して、俺のことなんか目覚まし時計程度にしか思ってなくて」



――そんなお前は、双葉杏の半分でしかなかったんだな。



プロデューサーはそれだけ言い切ると、僅かに視線を泳がせて、それからゆっくりと俯いた。





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