31: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:22:32.60 ID:OJA0wgUK0
――エレベーターは一階に辿り着く。一歩一歩足を踏み出すたびに、行き場のない後悔が肥大化して、私の胸をゆるやかに締め付けた。
どうしよう。
間違えた。
やっちゃった。
謝りに戻ろうかな。
メールで弁解しようかな。
無かったことにできないかな。
頭に浮かぶどんな選択肢も、私には間違いのように思えた。
『謝りに行くって、何を謝るっていうの』
『メールで弁解するって、具体的にどうやるんだ』
『今さら無かったことになんて出来るわけがないじゃん』
理性は次々に思い浮かんだ案を棄却していく。
――今思えば、頭の中で打開案を否定していたのは私の理性ではなく、私の感情のほうだった。
私の頭の回転の速さは、案を却下する正当な理由を即座に思いつくことではなく、自身を納得させ得る理由を多少強引にでも作り上げることに寄与していた。
十七歳の私は、こういうところに関して器用だった。
散々頭を抱えたものの、結局のところ私は、何もせずに家に帰った。
私はその場から動かずに目を閉じることで、選択することから逃げていた。
そうやって逃げていれば、いつか誰かが私の代わりに選んでくれると思っていた。
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