双葉杏「透明のプリズム」
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24: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:16:53.42 ID:OJA0wgUK0


私は決して優柔不断ってわけじゃないんだけれど、どの飴玉を選べばいいのか、決めることができなかった。
私は飴のどこが好きなんだろう。
少し考えてみて、ひとつの結論に辿り着く。


「アメの味を自分で決めたこと、なかったな」

「へぇ」

「杏、たぶん、何味のアメを貰えるのか直前まで分からなかったから、アメが好きだったんだよ」


プロデューサーはデスクに腰掛けて、引き出しの文房具を整理していた。
送りに車を出してから迎えに行くまでのこの隙間の時間は、随分と手持ち無沙汰なものらしかった。


「自分で決めなくていいのは楽だよね」


いくつかの選択肢があって、その中からひとつを選ぶ。
間違った選択肢を選べば後悔するし、間違った選択肢を選んだと思っていても、それが最善の選択肢だったりする。

選択をするのは、疲れる。
頭を使って疲れるぐらいなら、目をつぶってでも選んでしまった方がマシだ。
私は両目を閉じ、飴玉の山の中に手を突っ込んで、くじ引きの要領でひとつの飴をつかみ取る。


コーヒー味だった。
口に含んで、舌で転がす。
コーヒーの独特の風味が口の中いっぱいに広がる。
これぐらい甘ったるい方がちょうど良い。

――やっぱり、自分で選ぶよりも適当に選ぶ方が、気は楽だし、後悔もしないで済む。
仮に間違えた選択肢を選んでも、自分以外のせいにできるんだし。




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