双葉杏「透明のプリズム」
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18: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:11:58.66 ID:OJA0wgUK0


こんななぞなぞがあるんだけど。

プロデューサーの言葉を私は一字一句覚えていた。
記憶の彼方にあったはずのなぞなぞを、耳が記憶している通りに、声帯が勝手に震える通りに、声に出してみる。


『緑色の空はどこで見ることが出来るだろうか?』


僅かに間をおいて、私は再び口を開く。
「プロデューサー、分かる?」



数秒間の沈思黙考の末、彼は恐る恐る切り出した。


「オーロラってさ、緑色じゃないか?」


私は一瞬、腑に落ちかけた。
しかし直感はその答えを否定する。
もしこのなぞなぞの答えが「オーロラの見える場所」というのなら、これはなぞなぞなんかじゃない。ただの知識問題だ。

もっとも、その直後、直感よりも信じるに値する否定材料を思い出したのだけれど。


「日本にあるらしいから、オーロラじゃないと思う」


プロデューサーは、緑色の空が見られる場所は、日本にあると言っていた。
オーロラは北海道で観測されることもあるらしいけど、もしオーロラが見られる場所というのが答えならば、プロデューサーは「日本にある」ではなく、「日本にもある」と言うはずだ。


「オーロラじゃないのなら、もう分からないよ」


彼は左手をひらひらと動かした。
その途中で信号が青に変わって、彼は慌てて左手をハンドルに戻し、しかし車はゆっくりと発進させる。
車の運転に関しては彼の方がかつてのプロデューサーより慣れていた。




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