16: ◆YF8GfXUcn3pJ[saga]
2019/08/18(日) 02:10:04.51 ID:OJA0wgUK0
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次の日から、彼は飴玉を持ち歩くようになった。
一口に飴玉といっても種類は豊富で、爽やかな柑橘系、メロンやイチゴなどの主要な果物類、ソーダやコーラといったドリンクの味を再現したもの、黒糖やミルク、梅やハッカに至るまで、幅広い味の飴玉を、まるで毒見役であるかのように消化させられた。
彼は私の好みの味の飴を探し当てようとしていたんだと思う。
でも私は、特定の味に価値を見出しているのではなく、色々なバリエーションの味を楽しめることこそが飴玉の素晴らしいところだと考えていた。
私にどんな飴玉を与えても、私は「美味しい」しか言わないので、彼は随分と骨を折っていたように思う。
後々になってこの話――私の飴の好みの話――をすると、随分と溜飲を下げたようで、「盲点だった」「その可能性は考慮してなかった」としきりに頷いていた。
次に話が動くのは、彼が飴玉を携帯するようになって一週間ほどが経過した頃だ。
新しいプロデューサーの持ってくる飴の味は、不規則的に変化する。
ボーカルレッスンの前後はのど飴であることが多かったが、それ以外の場合には、飴の味をある程度でも予測するのは難しいことだった。
そんな中、飴の味について思いを巡らせることが、私の日々の楽しみのひとつになっていた。
日常に不確定要素が存在するというのは想像以上に楽しいものなのである。
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