22: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2019/08/10(土) 00:41:03.23 ID:k2me14jR0
「そのステージ、何時間後なの?」
「五時間後だな」
「まだ結構余裕あるんだね。場所は? ここから遠いの?」
「いや、車で一時間もかからない距離だけど」
「ふぅん。ステージ自体はどのくらいの時間もらってたの?」
「次のアーティストとの入れ替え込みで三十分だな」
「そっか。じゃあ、プロデューサーは進行表とコーラスで入る曲の音源。私のスマホに送っといて」
「……は?」
「私は衣装室行って衣装選んでくるから。それから演るのはなんでもいいよ。ロックバンドの人に私の持ち歌教えて、リクエスト聞いてみてよ」
「ちょっと待って。なんか凛が出るみたいな意味に聞こえるんだけど」
「それ以外の意味があると思う?」
「いや、だけど凛は今日オフだろ」
「うん。だからそれなりにギャラは弾んでもらいたい、かな」
「それは、まぁ、もちろん。事務所としてもできる限り出してもらうように言うけど……」
「あ。そういうのじゃなくて、さ」
「そういうのじゃない?」
「うん。今日はお寿司の気分なんだよね」
「……なるほど」
「じゃあ私は衣装選んだらそのままスタジオにいるから、プロデューサーは時間になったら迎えに来てね」
「スタジオ?」
「アップ、済ませとくからさ。あと、演る曲決まったらできるだけ早く教えてね」
「あ、ああ。でも本当にいいのか? せっかくのオフなのに」
「何回も確認しなくてもいいってば。ほら、プロデューサーは早く先方に電話して確認取ってよ」
「この恩は必ず返すよ」
「ふふっ。期待しとく」
本当にありがとう、と何度も何度も言って頭を下げてくるプロデューサーに手を振って、まずは衣装室を目指す。
音楽フェスに見合うようなカジュアルなものが見つかるといいけれど。
さて。
あれだけ自信満々に引き受けたのだ。
完璧にこなさなくては格好がつかない。
というか、失敗しようものなら恥ずかしさで死にたくなることこの上ないだろう。
お客さんやロックバンドの人たちからしたら、完璧にこなして当然で、正直なところ私に旨みは全くと言っていい程にないステージであるが、不思議と私はいま、燃えていた。
冷静になって自分の状況を客観視してみると、とんだオフになったものだと笑ってしまいそうになるけれども、まあ。
やってやろうじゃないか。
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