19: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2019/08/10(土) 00:36:38.37 ID:k2me14jR0
■ 三章 ソールドアウト・マーク
久々のオフをもらえた私は、午前中は愛犬であるハナコの散歩に、実家の花屋の手伝いに、と自宅での時間をまったりと過ごしてから、昼食を摂ったのちにあてもなく街へ繰り出した。
仲の良い同じアイドルの友人たちは今日は揃いも揃ってお仕事と聞いているし、学校の友人も部活で忙しそうだったから、足の向くままにショッピングでも楽しむとしよう。
花屋の店先のひさしから一歩日向へ踏み出すと、太陽は今が最盛とばかりにじりじりと私目掛けて照りつける。
せっかくのオフなのだ。
暑さに負けてだらだらと無為に過ごしてなるものか。
そう思って、負けじと次の足を踏み出して、最寄駅へと向かう。
ただただ歩いているだけなのに、駅の構内に入る頃には背中に汗が伝っていた。
どこに行くかは未だ決まっていなかったが、ひとまずはこの暑さから逃れたい一心で、丁度来ていた電車に行き先も確認せず飛び乗った。
空いている席を見つけ、腰をおろす。
ふぅ、と息が漏れかけるのを喉元で止めて、出入り口付近のディスプレイをぼんやりと眺めた。
私が乗った電車は、奇しくも普段通勤に利用するものだった。
無意識で事務所に行くつもりだったのだろうか。
職業病一歩手前かもしれない、と自分で自分が恐ろしくなりつつも同時に、そういえば事務所のロッカーに忘れ物をしていたのだった、と思い出した。
それは来週に収録する予定のラジオの台本で、まだそれなりに期間はあるが、回収しておくのも悪くない。
事務所の付近にもショッピングに適した施設はいくつかあるし、何より無料で涼めるのだから、ついでに寄るのは選択としてはアリだ。
こうして、最初の行き先が決まったのだった。
35Res/51.99 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20