276:名無しNIPPER[saga]
2019/08/27(火) 15:55:51.81 ID:qXuBnPadO
俺は騒めき始める兵士達を宥め、少し調子に乗ってしまう。冒険者達の方へと向き返り、ニヤついた表情で──。
「いいか、俺を倒したかったらヴァーダを連れてきな」
ここぞとばかりに見栄を張る。本当に来てしまったら殺されるのは明白。だが、俺には確信がある。
向こう岸で戦うアレスの方へあの白仮面が行くからだ。ならばこそ、大見栄切ってつけあがる。
「そこのお前、伝えておけ。この俺が一騎打ちを所望していると……な」
「このっ…!」
もうやりたい放題だ。
「なんだ?文句があるなら俺とやるか?」
「ちっ…!」
俺が指名した冒険者は人集りを割って走っていく。無駄な事を、報告したところで白仮面は居ないぞ。
俺は自分に任された仕事に成功し、満足して空を見上げる。
もう既に辺りは暗くなっており、満天の星に月がひとつ。ん……?月がひとつ?
確かこの世界は月がふたつでは無かったか?
『満月が1つになる日……『ヒトツキの夜』にこの湖に訪れると、セイレーンの歌が聞けるそうですよ』
ふと、俺はゲルムさんから聞いた話を思い出した。これが噂のヒトツキの夜なのか、すごい偶然だな。
俺は湖を見て、セイレーンが出てくる事に期待する。御伽噺や迷信かもしれないけど、やっぱり期待はしてしまう。
湖を眺めていると、メリルの兵士達に囲まれてあれこれ質問され始めた。改めてヴァーダってすげぇ人気だな。
冒険者達もやってられねぇといった雰囲気で、徐々に後退していった。
354Res/270.58 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20