60: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:12:31.14 ID:9YnfOZCp0
『クラスの人気者の面白くもない馬鹿話に笑ったふりをするばかりで、なんのために生きてんだろうって思うぐらいで。流されるまま生きるだけの存在』
その言葉に微か、彼女が目の前で身じろぐ。ああ……そうだよね。君も、そうなんだよね。交番で彼女の目の奥に感じた既視感の正体が今ならわかる。
それはきっと、漠然とした将来への不安と、熱意を向ける先のないことへの焦燥。つまらない日常をただ流されるだけの日々に、このままでいいはずがないと思っていても……何をすればいいのかわからない無間地獄のそれ。
まるきりすべて同じなどとは思わない。俺と彼女の間にはきっと、才能とか、センスとか、頭のよさとか、見た目とか。そういういろんな部分が隔絶している。
けれど、それでもこの真綿で首を絞められるような感覚は似ていると、そう思った。だからこその既視感だったのだろう。
『でも東京の街角で、この動画のゲリラライブを見た時、思ったんだ』
そんな無間地獄から逃れ出たあの日のことは今でも思い出せる。せっかくの修学旅行にもかかわらず、自由行動の時間でゲームセンターに行った帰りに見た、その景色を。
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