6: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:14:15.59 ID:FCK0uUJh0
『……もう一年ない、か』
上京するとき、お袋と親父に誓った期限がある。それが四年だった。今年中に俺はプロデューサーにならないといけない。もし出来なければ……田舎に帰って家業を継ぐことになるのだろう。
継げるものがあるだけ恵まれている方だ、なんて思いながら扇風機をつけると、ごろんと部屋に寝転がって天井を見る。
そしてケータイを取り出し片手で小器用に開いた。型落ちもいいところだがとある理由で買い替えるつもりはない。あと夜勤バイトで食いつないでいる人間にそんな余裕はないってのもある。
俺はぷちぷちとボタンを押して、一つの動画を呼び出した。それはとあるゲリラライブの映像だった。
そこに写っているのは一人のアイドルの姿。今から四年前の高校生の頃、修学旅行で来ていた東京の街角で撮った物だ。画質も音質も悪く、時間もほんの数十秒の短いもの。
この女性が誰かはわからない。たまに誰かに聞いてみたけれど誰も知らなかった。だが――。
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