57: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:10:58.05 ID:9YnfOZCp0
「これが……?」
『うん。少なくとも……俺にとっては、間違いなく。そういう人を、世に出したいと思ってる』
何とは言わず、俺は肯定した。そしてもう一度再生されるそれを、まるで初めて見るモノのように、熱心に見る彼女の横顔を見る。
少し目を細めながら見るそれは、まるで美術品を思わせる切れ長の目も相まってひどく美しく見えた。
花屋のカウンターでただ立っている胡乱げな姿も良いものだと思う。そこにいるだけでも十二分に映えるだろう。けれど、俺は思う。彼女の瞳は何かを見据えている方が、きっと似合うだろうって。
どうしてそう思うのかはわからない。漠然とした俺の勘――これまで何の役にも立たなかったそれだけれども、それに俺はすべてを賭けたいと今も思っている。
『お話があります』
俺はそう声を掛けた。動画を見終わり、ケータイを俺に返し、顔をあげた彼女はゆっくり視線を俺の顔へと移して。
刺々しさのない、どことなく揺れ動くような視線の向こう。微かに碧に見える瞳の奥を、俺はじっと見据えて。
……ああ、とてもきれいだ。場違いにもそう思いながら、言う。
『――“アイドル”に、なりませんか』
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