54: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/17(土) 18:09:35.22 ID:9YnfOZCp0
「あっ、その携帯電話って」
『はは……君に拾ってもらった奴です。その節は本当にお世話になりました』
などと言いながらぷち、ぷちとボタンを押す。何度かそれを繰り返せば、画面に映っているのは――。
「……アネモネ?」
不格好なペットボトルの花瓶に挿された二輪の花の写真を見て、彼女は言う。
『ええ、はい。教えてもらった水切りを試したんですよ。そしたらすっかり元気になって。半分しおれてた奴まで復活したんで、それでせめてお礼の言葉だけでもって思って』
「……まさか、わざわざそれだけを言いに?」
『うん? そりゃあもちろん! なんだかんだで何もできずに枯れていく花を見るのはちょっとアレですし……。いやあ、やっぱり本職の人は違うなって思いましたね。そんなわけで、また何かあれば教えてください』
俺がそう言えば、彼女は目を二度、三度と瞬かせる。そして、
「そうだね……いいよ、私でよければだけど」
答える彼女の口調からはどこか刺々しいものが減っているような気がした。そして少しは打ち解けられたのかな、なんて俺が思っているとやれやれとばかり、彼女はちょっぴり息を吐きながら言う。
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