26: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 19:00:52.88 ID:caute9RW0
□ ―― □ ―― □
なんだよ、これ。
俺のそんな第一声は、あまりの衝撃に、声にさえならなかった。
アパートから歩いて数十分、郊外の少し入り組んだ、いかにも場末の路地といったオフィス街。そこに俺の目的地である、インディーズレーベルの事務所はある。
いや、あった。
貸しテナントが幾つも詰まる同じようなビルが並んだ一角。ひび割れた壁が年季を醸し出す、ビルの二階に俺は居る。
二か月前にはあったはずの数多の張り紙。微かに上階から漏れ聞こえていた歌声や楽器の音。埃っぽい事務所から聞こえる笑い声。
それらは今、どこにもない。目の前にあるのは無機質な鉄の扉とはがされたネームプレート、そして今や紙切れとなっただろう、散らばったパンフレットだけだった。
微かな痕跡を残して、ここに存在したはずのインディーズレーベルは掻き消えていた。
88Res/88.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20