25: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/08(木) 18:59:53.99 ID:caute9RW0
『そうだ、一応報告しに行った方がいいかなあ。うん、そうだ、そうしよう。俺は報告のために写真を撮った。そういうことだ』
完全に詭弁だ。詭弁だけど、自分でもこの上なくヤバイと思っている自分を落ち着けるにはこういう詭弁も必要だった。そうでもしなければ本当にどうにかなってしまいそうだった。
そうして今度は、普段着ほどラフではないけれどスーツほど堅苦しくない、外行きの私服に着替える。
報告――つまりインディーズレーベルの人たちの所に行こうというわけだ。あの子をスカウトができる、できないに関わらずこれは! という子を見つけることはできた。つまりそういう名目。
とはいえだ。こんな後ろ姿であっても分かる人にはきっとわかってもらえるはず。そういう確信があった。
もしあの人たちがこれだけで分かってくれるのであれば、間違いなく信用できる人たちだろう。そういう意味ではこの画像を撮った意味は存在すると言える。
まあ、全部後付けの詭弁であることは否定できない。それに……否定もしない。仕方のないこと。
(……あの子の後姿に惹かれたのは、事実なんだしね)
それを否定してしまっては本末転倒だ。そこだけは、ぶれてはならないと俺の本能が言っている。だったら迷う必要はない。俺はしっかりとケータイを握って、そしてポケットに突っ込んだ。財布を持ち、部屋の鍵も持つ。
二か月ぶりくらいだろうか、あの人たちに会うのは。ここしばらく連絡をしていなかったけれど、きっとこの子のポテンシャルは理解してくれる。そう信じていた。
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