20: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2019/07/24(水) 10:13:16.39 ID:lYLqPDaj0
女「……とても、素晴らしい音色でした。あれはただ弾いているだけでは出せない、優しい音……何を想って演奏されていたのでしょう?」
男「そこまで褒めて頂けるのは、少々恥ずかしい気もしますね…」
男「……この桜の木……今でこそ、このように見事な花を咲かせていますが、きっと、咲くことが許されなかった時があったのだろうな、と」
女「…と、おっしゃいますと…?」
男「数十年前、私たちがまだ生まれもしていない時代……とても大きな戦争があったと言います。この辺りも戦地となることが珍しくなかったようで……」
男「そこには、花開くことなく散っていった数々の命があるのでしょう」
男「今でこそ、この国は繁栄の礎を築いているように見えますが、その陰には多大な犠牲があったこと……生きたくても生きられない、そんな絶望の悲鳴が響いていたこと……どうしても考えてしまうのです」
女「……」
男「せめて、私の奏でるこのバイオリンの音が、彼らの傷を少しでも癒すことが出来ないかと……」
男「…自分でも、徒労に終わることは分かっているのですが……」ウツムキ
女「……」テク..テク..
スッ(手を重ねる)
183Res/154.5 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20