【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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33:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 04:48:31.62 ID:VQj+6fZHO
「意外と不器用なんだね!」
それを見た夏樹はいたずらに微笑んでみせる。少女のような無邪気な笑顔だ。
完璧だと思っていたパートナーの意外な弱点を発見し、彼女は自身の庇護欲が沸き立つような不思議な感情を覚えた。
「くそ、次は夏樹の番だ」
「任せてくれ」
プロデューサーは飛び散った具材を本体に戻しなんとか整えて、それから夏樹にコテを手渡した。
「――ふふ、パーフェクトだね!」
「う、うぬぅ……」
「アタシの勝ち! 罰としてドリンク持ってこい!」
「う、うぬはなに飲むの?」
「コーラを頼む!」
「ぽんぽこぽーん」
対照的に夏樹は形そのまま、一つの崩れさえ起こさず完璧にひっくり返した。
滑らかな焼き面は程よく焦げ目がつき、茶色と黒のコントラストはバランス良く美しい。教科書通りの、まさにパーフェクトな出来栄えである。
大敗を喫したプロデューサーは、彼女の言う通りに罰ゲームを実行した。
「さてと……」
そして、両面が焼き上がった頃合いを見て、二人はそれぞれのお好み焼きにソースを塗り、マヨネーズをかけ、青海苔をまぶし、そして鰹節を散らして完成。
「見ろ、俺の愛がこもった『ソウル』を!」
「プロデューサーさん、男がやるもんじゃないよ……それは」
マヨネーズがハート形にかかったお好み焼き、「ソウル」を見て、夏樹は頭を抱える。
これではまるで女子高生のお好み焼きパーティーではないか。だったら自分も「Rock」だとか描いておけばよかった――マヨネーズが格子状にかけられた自身のそれと見比べて、彼女はそんな風に思った。
(女子高生のお好み焼きパーティーか……)
その光景を前に、いつかの思い出が夏樹の脳裏をよぎる。
それは以前に組んでいたバンド、そのバンド仲間と、この道とん堀で同じ様に鉄板を囲んで、団欒していた記憶であった。
「ほら、冷めないうちにいただこうぜ」
四等分になったお好み焼き、二枚ずつ取り皿に盛られ、それが夏樹へと差し出される。
それで彼女は我に返り、箸を取った。
「「いただきます」」
小声で呟いて、二人はお好み焼きを口へ運ぶ……。
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