【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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32:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 04:43:58.81 ID:VQj+6fZHO


 プロデューサーはまずお好み焼き二種の容器、その中身を木製スプーンでかき混ぜる。


「確かこうだったよな……」
「そうそう。お好み焼きは最初かき混ぜて、それから鉄板に移して丸型に成型するって感じだったね」


 記憶を頼りに作業を進めるプロデューサーと、卓上にある油差しの容器を手にとって、鉄板に油を注ぐ夏樹。それから彼女はコテを取って、注いだ油をまんべんなく鉄板に馴染ませる。

 その連携はさながら阿吽の呼吸であり、彼らが築いてきた絆はこんな場面でも形になっていた。


「よし、こうしてっと……」


 かくして、キムチ・天かす・紅生姜・刻みネギ・豚バラ肉・卵などで構成される「ソウル」と、牛スジ肉・天かす・紅生姜・刻みネギ・卵などで構成される「スジ牛」がかき混ぜられ、渾然一体となったそれが二つ、鉄板の上に並ぶ。


「こんなもんか?」
「もうちょっと広げた方が火が入りやすいんじゃないか?」
「そうだな……よしっ」
「……うん、いい感じ!」


 鉄板上の共同作業を経て、焼き上がるまでの手持ち無沙汰な時間がやってくる。
 早くひっくり返したい衝動に駆られるが、焼き上がりを待つのもまた一興。鉄板焼きの醍醐味というものである。


「……そろそろ、いくか?」
「おっ、頼んだよ」


 やがて鉄板上の丸型はしんなりとして、具材が焼けるいい匂いが二人の鼻腔をくすぐる。

 頃合いを察知したプロデューサーは、コテを両手に持って身構えた。


「待て、こうしよう――これは俺がひっくり返すから、もう一つは夏樹に任せる」
「お、勝負でもするかい?」
「――俺の勝ちだ!」


 一瞬の静寂、固唾を呑む夏樹……。
 刹那、威勢良く丸型をひっくり返したプロデューサー。


「あはっ、プロデューサーのへたくそ!」
「……うぬぅ」


 が、その気迫は虚しくも空回り。大失敗という程でもないが、ひっくり返った丸型は鉄板の端に飛び、その形を僅かに歪ませて、具材も微かに飛び散っている。






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