【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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34:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 04:51:24.76 ID:VQj+6fZHO


「……はあ、ビールが欲しい」


 思わずそう漏らしてしまうプロデューサー。
 お好み焼き、「ソウル」。なぜソウルというネーミングなのかは不明であるが、恐らく具材であるキムチが関係しているのかもしれない。キムチといえば韓国、そんな韓国の首都はソウル――安直ではあるがこんな風に。

 ソウルを味わうプロデューサー。

 程よく焼き上がったお好み焼きのふわふわ感と、キムチの子気味良いシャキシャキ感がなんとも新鮮であり、そこへ豚バラ肉の旨味が加わる。
 香ばしく焼けたソースの風味と、キムチの辛み、そしてマヨネーズの酸味・甘味、それらが口の中に蔓延し、ジュワリと溶けていく……。

 豚キムチとマヨネーズソースの邂逅は、口の中で必然となる。運命のマリアージュ、約束された美味のヴァージンロード。それは胃という教会まで緩やかに続く。至福の時間。


(そう、確かこんな味だったよな――美味しい)


 対する夏樹は、「スジ牛」を味わう。

 ゴロゴロとたっぷり含まれた牛スジ肉はそれだけで食べ応え充分なのに、そこにお好み焼きという粉物の生地が加わることで、さらなる満足感が付与される。
 牛スジ肉は噛めば噛むほどギュギュッと旨味を醸し出すし、それの食感と生地の柔らかさ、その対比が面白く、口の中でしゃっきりポンと踊るようだ。

 そこにソースのしょっぱさ・香ばしさ、マヨネーズの酸味甘味がやってきて、これはもう味覚の大渋滞。幸福の暴力、幸福の拷問である。

 美人は三日で飽きるというが、美味は一生飽きない。
 この幸せさえあれば、美人などいらない――結婚式は既に口の中で完結している。

 そのような錯覚に陥ってしまう。


「「あ……」」


 気づけば、あっという間にお好み焼き二種をまっさらに平らげてしまった二人。


「よし、もんじゃを作りつつ、次のお好み焼きを頼むか」
「そうだなー……」


 待つのも一興……とは言うが、耐えきれず次の一手を速攻でしかける彼ら。






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