【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 03:06:11.21 ID:VQj+6fZHO
「珍しいね、プロデューサーさん。そっちから誘うなんてさ」
「お前、最近浮かない顔してただろ? さあ、行くぞ」
そして時は流れ――翌月の金曜日。夏樹が「仕事を入れて欲しい」と言っていた休日、その前日の夜であった。
「泊まる準備、ちゃんとしてきたか?」
「もちろんだよ。なんかこういうの、ちょっとドキドキしてる。キャラじゃないよな、アタシの……」
寮の前に止まる一台のセダン。その傍に立つプロデューサーは、寮から出てきた夏樹を迎えて助手席へとエスコートする。
「サンキュー。それじゃ失礼するよ」
彼女が乗車したのを見届けて、プロデューサーは運転席へ。
「……」
夏樹から見えないように、寮の入り口にこっそり立つ涼と、彼女を始めとするバンドメンバーたち。
プロデューサーはそれに気付き、無言で首肯してから車に乗った。
(これは夏樹を傷つけることになるかもしれない。だが、避けては通れない道だ)
覚悟を決めて、彼は車のキーを回す。
「……それにしても、わざわざ仕事終わってすぐに出発するなんて、そんなに急ぐ必要もなかったんじゃないか?」
「休日を満喫するためだ」
「本当は仕事したかったんだけどさ。まあ、たまにはこういうのもいいか」
助手席でくつろぐ彼女を一瞥し、プロデューサーはこれからの行程について思案する。
(やっぱり、その方法しかないよな。よし、それでいこう)
過ぎ去る景色と共に、彼の脳裏ではとある記憶が再生される。
(夏樹を頼んだよ、プロデューサー)
夏樹の母から電話があったあの日。それを経て、プロデューサーは決心する。
そしてそれら事の顛末を社長へ伝え、バンドメンバーにも伝え、彼女たちと共にある作戦を練った。
そうして練り上がった作戦を実行に移したのがこの夜である。
仕事は入れられなかったが、気分転換に小旅行にでも行こう――彼は夏樹にそう言って、なんとか誘い出すことに成功した。作戦は次のステップへ。
やがて、彼が運転する車は首都高へ入る。
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