【モバマス】 木村夏樹「道とん堀には人生がある」
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/15(月) 03:00:26.58 ID:VQj+6fZHO


(いつもなら、こんな風にくっついてこない)


 いつも通りの快活な木村夏樹、それを演じている――プロデューサーはそんな違和感を覚える。


(自身の悩みから逃げるように、俺に甘えているような)


 もしかするとここがチャンスなのかもしれないと、彼は一つ覚悟を決めた。
 チャンス……夏樹から全てを聞き出す為の。


「――失礼します。プロデューサーさん、お電話が入ってます」


 彼女に勝負をしかけようとした矢先、事務員である千川ちひろが扉から顔を覗かせる。


「……分かりました。そちらへ向かいます」


 内線で取り次ぐことはせず、わざわざ電話口へと促すちひろ。その意図を察したプロデューサーは重い腰を上げる。


「仕事、入ったのか?」
「分からん。いたずらするなよ」
「ハハッ、大人しく待ってるよ。いつまでも」


 夏樹に釘を刺し、彼は部屋を出た。


「お待たせ致しました。お電話代わりました――」


 どこか嫌な予感のような胸騒ぎを覚えながら、プロデューサーは常套句をもって電話口に立つ。


「あの、いつも夏樹がお世話になっております。夏樹の母です」


 ちひろの配慮の意味を今ここで改めて思い知った彼は、平静を乱さないように努め、会話に集中する。


「……分かりました。ご連絡ありがとうございます。はい、それでは、本人にも伝えておきますので」


 一通りのやり取りを済ませ、プロデューサーはゆっくりと受話器を置く。
 天井を仰ぎ見た彼は、静かに息を吐いた。


「あの、プロデューサーさん……」


 ちひろが心配そうに声をかける。


「大丈夫です」


 食い気味に応えたプロデューサー。


「ちょっと、一服してきます」
「あ、はい……!」


 そうして、屋上へ向かう。
 ポケットを弄りながら、彼は一人これからの展開について考えを巡らせた。






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